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歌仙『舷』

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A:久しぶりやな。この頃連句とか言うもんをしてたちゅうやないか。 英:うん、掲示板でな。もう完成して公開するだけなんやけど。 A:けど? 英:そのままではわかりにくいさかい、振り返っての座談会を載せたいんやけど、面倒くさいから誰か一人が解説せえ、ちゅうことになったんや。 A:それで僕を引っ張り出してきたんか。 英:うん、もう一人の僕と架空の対話ちゅう趣向でな。 A:そうか、山口昌男とかがようやっとったな。なら、さっさと始めようか。 英:発句「 ゆく春の舷に手を置きにけり 」鴇田智哉 A:最初からメンバー五人と違う人の句が出てきたな。 英:これは脇起こしちゅうてな、先人の句や既にある句を貰うて始めるやり方。例えば追悼のために連句したりする時、故人の句を頭に据えてやったりとかな。 A:ほなこの人死んどるんか。 英:アホ言え、鴇田さん知らんのんか。例えばの話や。今回は五人で七句ずつ出すと一句余る、それを補うためにこうしたまで。他のやり方としては執筆、つまり書記役の句を一句どこかにはめ込んだりな。 A:まああんまり細かいことはいいけど。何ともあっさりした句… 英:始めた季節、晩春の動き始めた気分やな。これから何が始まるのか、いろいろ想像が膨らむやろ。 A:そうかな。 英:脇「 平瀬を渡る二尾の若鮎 」須。脇は発句を受けて同季同場を詠む。 A:鮎ちゅうと縄張りか。一触即発やな。 英:脇は発句の気分も承けるんや。鮎は夏の季語。これは若鮎で晩春。その頃はまだ縄張り意識はない。おだやかに連句を始めましょうという、挨拶やな。 A:メンバー五人でも二尾か。 英:まあそれは後から来るという心かもな。 A:それで君か。 英:三「 組紐のおろしたてにも東風吹いて 」英 A:組紐ははやりの映画『君の名は。』から取ったんか。 英:まあな。新しい縁を作りますかという、これも挨拶。三は丈高く転じるのが約束なんやけど、これはちょっと引きずってるかもな。 A:むしろ次が場面転換しとるな。 英:四「 奥の電話がるるるると鳴る 」景 A:るの字数合うてるか。 英:合うとるわい。感触としては字数以上に鳴っとる感じかな。 A:今どき固定電話で。 英:昔の電話って、オペレーターと利用者たちをつないで会話する、つまり放送番組や掲示板みた